2012年 12月 11日
秘訣はあるがヒミツは無い
間違いだらけの農業業界!農業は儲かる!「儲かる農業」はこちら
なんだか、読んでいてイチイチ気持ちが晴れてくる本です。
「農業は儲からない。農業人口の減少を見れば明らかでしょう?補助金をもらってやっと成り立つのだよ」とあちこちで聞きますし、実際私もそう思っていないわけでもありませんでした。食料自給率の低下など、これからの日本を考える際何かと暗くなる資料をたくさん目にしつつ、では具体的にどうしたらいいのか、1人の社会人として別段意見を持っていたわけではありません。
ところが、著者の嶋崎さんはハッキリとこう仰います。
《たしかに、トップリバーを2000年に設立したときの売り上げは3700万円だったが、2008年には10億9000万円を計上するほど成長を遂げた。この間、単年赤字は初年度のたった一度だけである。
このように述べると、私たちがとてつもないビジネスを展開しているように聞こえるかもしれないが、私たちは今まで誰も思いつかなかったような画期的なビジネスモデルを展開しているわけではない。しごく真っ当で常識的なビジネスを農業という分野で行っているだけである。
それは裏を返せば、他の産業で当たり前のように行われていることが、農業の世界では行われていないことを意味している。一般のビジネスにとっては常識であるはずのことが、農業では常識ではないのだ。トップリバーが快進撃を続けてこられた理由はそこにある。
儲かるヒミツなどどこにもない。いや、秘訣はあるが、誰も知らない特別な方法論などないと言ったほうが正確だろうか。》
(「儲かる農業」 嶋崎秀樹著 竹書房新書P.13)
ごく一部の方だと思うのですが、地元で農業や自然に関するお仕事に携わっている方のブログや発信で「農業は儲けを考えてはいけない」だとか「金じゃないんだよ」とおっしゃる方がいます。一言でいうと「金儲けは悪いことだ」という、漠然とした拒否反応を起こしているようにしか見えない人たちです。
たしかに、“金の亡者”(笑)みたいになるのもどうかと思いますし、儲かれば何をやっても良いというわけにはいかないでしょう。ですが、人の営みが博い意味で世の中のモノやココロを豊かにする事と定義したとき、すべからく「利益」(黒字)の事を考えるべきですし、そこを避けて通ることなどできません。嶋崎さんは
《利益をあげるのは自分たちが私腹を肥やすためではなく、自分と自分の周りの人々を幸せにするために他ならない。》(同書 P.21)
とピシャリと指摘してくださいました。
まー、それにしてもガッツリ儲ける事例がおもしろいほど紹介されています。今まで“儲からない”と思われていた刷り込みのような概念は何だったのでしょうか。しかも、引用したようにそのどれもが、核心的なアイディアやモデルではなく、他の業界では当たり前ーたとえば、生産部門だけではなく営業にも力をぬかないとかーのことばかりなのです。
これからの日本の農業はどうあるべきかという、一見難解なテーマを実に分かりやすく腑に落ちる文章で紹介してくださいました。農業について書かれた本ではありますが、結果として人が人らしく仕合わせになるために、「仕事」と「お金」をどう考えたら良いのかというヒントに溢れているという意味で、ビジネスやマネーリテラシーに興味がある人にもぜひ読んでもらいたいと思います。
情熱と理論が綺麗に一致した、すばらしい本です。
by ANB27281
| 2012-12-11 06:52
| レビュー