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ふたりの子育てルール

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「ありがとう」の一言からはじまるいい関係☆「ふたりの子育てルール」で楽になりましょう。








来月9日に、日野郡にお住まいの2歳〜小学校就学前のご家庭を対象にした「子育て講座」で、講師を務めることになりました。





【現役パパ&キッズ専門スポーツクラブが伝授する「パパをもっと楽しむ講座」】




日時:平成24年12月9日(日)10:00〜12:20
参加対象者:日野郡内の2歳~小学校就学前の子育て世帯
開催場所:日野町山村開発センター
所在地:鳥取県日野郡日野町根雨101
電話番号: 0859-72-0362
内容と予定時間:
●開会行事(10:00~10:10)
   ・開会あいさつ
   ・よりん彩からのPR
●第1部 講演・意見交換(10:10~11:10)
   講師 松本誠二氏(スバル代行社長)
   演題 「子育ては人生最大のエンターテインメント」
●休憩・会場移動(11:10~11:20)
●第2部 親子体操教室(11:20~12:10)
   講師 チャレキングスポーツクラブ
   テーマ 「子どもの運動感覚を楽しく磨こう」
●閉会行事(12:10~12:20)










私は、3人の子育てを通じて可能な限り家事や育児を共有したいと思ってきました。それは、多くのご家庭で男性と女性が「対立」しているという現状に少なからず違和感があったからであり、また「男はホントは子育てには向いていないけど、“手伝う”くらいはできるでしょう?」といった、一般常識が、基本的に間違っているのではないかという疑問があったからです。



せっかく好き同士結婚して、子供にまで恵まれたというのに、家事や子育てでパートナーとなるべく喧嘩したく無いじゃありませんか。「男は子育てできない」というのは、究極的には女性が持つ偏見と、男性の“甘え”だと思っています。





我が家は妻がいわゆる専業主婦ですが、共働き子育てをされているご家庭に、今日は治部れんげさんという方が書かれた「ふたりの子育てルール」という本をご紹介。9日の講演に向けて、何かヒントになればとたまたま見つけた本ですが、とても素晴らしい本だと思います。





実は、いわゆる「子育て本」と呼ばれるジャンルの書籍で、これは良かった!と心から思える本は少ないと感じています。私が男性だからなのかもしれませんが、特に女性が書いた子育て関係の本は「私の旦那ってこんなにステキ!」という自慢か、逆に「こんなに辛いけど私がんばってる!」といった自虐か、あるいは「とにかく子供がかわいいの!」という、感情論に終わるケースがあるからです。



治部さんは、本書の執筆に際してとても丁寧な取材をたくさんしてくださいました。実際に子育ての現場で活躍する男性に行ったインタビューも読み応えがあります。また、とてもロジカルに保育所や行政の現状を分かりやすく説明してくださる一方で、制度の不備を嘆いたり「こうあるべきだ!」と声高に主張だけするのではなく、「まずは夫婦でできることからはじめましょうよ」といった、私達と等身大で、同じ目の高さの語り口が実に爽やかです。




夫婦2人で稼いで、夫婦2人で子供を育てるのを「大変」から「楽しい」にするにはどうしたらいいのか?それは、簡単な事ではないと思います。しかし簡単ではありませんが、できない事ではない。時間はかかりますが、かならず現実可能な事です。仕事も育児もあきらめたくないすべての女性と、そのご主人に読んでもらいたい本ができました。
by ANB27281 | 2012-11-23 07:01 | レビュー

純米酒Book

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《今は誰も信じてくれませんが、20代まではお酒がほとんど飲めませんでした。それがあるとき、神亀酒造の活性にごり酒を飲んで世界が一転!こんな日本酒があったのかとビックリ。今まで日本酒で感じていた苦手な要素が皆無。かれこれ20年前の出来事です。

日本酒がダメだと思っていたのは、たんに自分がいいものを知らなかっただけという浅はかな誤解に反省。同じようにお酒に偏見を持つ人たちに「おいしい日本酒はおいしい!」ことを伝えたく、さまざまな日本酒イベントのお手伝いをしてきました。しかしながら、おいしい酒とそうでない酒の品質差には深くて暗〜い溝が。いくら「日本酒で乾杯!」と叫んでも、よっしゃと飲んだその人がそのへんの酒を選べば「やっぱりまずい」で元の木阿弥。おいしいお酒は、ふらっと入った酒販店でなかなか売っていません。じゃあ、おいしい酒は足りないのかというと、あるところにはたんまり埋もれているのが現実です。》(「純米酒Book」P.182)





ふと気がつけばもうさほど若くも無くなってきましたが、20代のころからずっと、日本酒のほんとうのおいしさを少しでも多くの方と楽しみたいと思い、ブログなどで発信してきました。「純米酒を極める」という、おそらく日本酒の入門書としてはこれ以上無いと思われる本を課題図書として、読書会を主催したこともあります。




「日本酒はベタベタしてイヤ」「次の日残るでしょう?」「ワインの方が個性も味わいも豊か」etc...こうした、お酒は好きなのに日本酒は敬遠したい、また、敬遠とまではいかなくても、日本酒を飲もうと思うといくつか「覚悟」をしないと飲めないという人に、私は今でも日本酒の爽やかで深く、懐かしくて新鮮な味わいを知って欲しいと心から思っています。上に記したような典型的な“誤解”は、すべてあなたの知らない、しかし実はほんの身近にある「ちゃんと造った純米酒」を飲めばなくなると確信しています。




日本酒のおいしさを本当の意味で伝えるのは、やさしい事ではありません。それは、日本酒がやさしくないからではありません。日本酒をとりまく歴史と関係者すべてが、不幸と間違いの歴史の中で事をすっかりむずかしくしてしまったからです。




この事を語るのはそれこそ大変(しかし重要)な問題なのですが、私は今、むしろ楽しくおもしろく日本酒を飲んでもらうにはどうしたら良いだろう、といった事を考えています。



著者の山本洋子さんは私の地元鳥取県境港出身。本書は、日本酒の中でもとくに「純米酒」というカテゴリーに注目して、美味しい日本酒の紹介はもとより、その文化や問題点をやさしく解説。日本酒に合う簡単なおつまみのレシピが写真付きで載っていると思いきや、女性必読(?)の「きれいになる飲み方」指南まで、幅広くフォローしてくださりました。むちゃくちゃてんこ盛り(笑)。女性雑誌編集者としての、十分なキャリアとセンスがきらりと光っています。




日本酒を語る切り口は無数にあります。そりゃそうだわな。だって、酒はその国の食文化を語る上での歴史的精神的拠り所だもの。そんな無数な切り口のうち、今もっとも足りないものは、女性的な視点で、本当の日本酒のおいしさを、軽やかな語りで「やさしくたのしく」伝える技術かもしれません。



男はすぐ熱くなっていかん。一言でいうと「ダサい」(笑)。



もちろん、カッコつけただけのうわべっつらな知識や議論はいけませんが、それでも敢えてポップで親しみが湧いてくるような文章を通じて、日本酒のおいしさを多くの人に伝える重要性を指摘したいと思います。誤解を恐れずに記せば、文化や芸術といったものは、男性(的な心根の持ち主)が生み、女性(的な心根の持ち主)が育てるものだからです。



発売当時、倉吉の山枡酒店さんのブログで知り読んだ本です。明日のラジオでも紹介しますが、残念ながら現在品切れ中との事。グラフ社におかれましては、ぜひともまた刷りはじめてもらいたいですね。山本さんはとてもキュートな美人ですが、酒の飲みっぷりは男性的な心根と、それから肝臓の持ち主です(笑)。最後に話が逸れました。
by ANB27281 | 2012-11-19 09:52 | レビュー

生物と無生物のあいだ

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「新書」の真骨頂!至極のサイエンス謎解き!「生物と無生物のあいだ」








今更ながら福岡伸一先生の本を読んでいます。


書評ブログを書いておいて何ですが、私は別段読書家というわけでもなく、広いジャンルの本を今まで読んでこなかったと自覚しています。とりわけ科学ーサイエンス系の本には抵抗があります。





だいたい、高校生のころから生物とか化学って苦手なんですよねぇ。ほら、デオキシリボ核酸とか。ヌクレオチドって何?って感じ。




「生物と無生物のあいだ」は、出版された時からあちこちで好意的に取り上げられていましたし、2007年に出版されて以来、私が今回買うまでに33刷(!)にもなる大ベストセラーです。今回遅ればせながら福岡さんの本をいくつか読み、人気の秘密がわかった気がしました。


平易な文章で温かく、叡智で論理的なのに優しくて、科学的なのに一級の文学作品なのですね、要するに。




一行で「要して」しまったので、もうこれ以上ブログで書きようがありません。いわゆる「サイエンスに蒙い一般読者に、分かりやすく解説する」といった新書とは言えないかもしれませんが(もちろんそういった一面もあります)、それ以上に、生命の事を地味に、ロジカルに記述しているのにこんなに感動的でぞくぞくするほどミステリアスだと実感するという意味で、普段推理小説をはじめ文芸を親しんでいる人全般に読んでもらいたいと思います。今思ったけど、「生命」について真摯に真剣に考えていったら、それは文学にならざるを得ないのかもしれませんよね。
by ANB27281 | 2012-11-06 10:35 | レビュー

上手な愛し方

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愛を取り戻せ!「上手な愛し方」をすべての男女へ







ちょっと、書店で手にとってレジに持って行くのが恥ずかしいタイトルの本です。



それはさておき、近年SNSなどのメディアを通じて、たくさんの友人がパートナーとどんな交際をしているのか家に居ながらにして分かるようになってきました。大して聞きたくもないのに、プライベートな投稿をガンガン勝手にやる人人がいるからです(笑)。そこで驚きをもって気がつくのは、ラブラブ(死語)とまでもいかなくても、上手くやっている男女とそうでない男女との乖離です。



もちろん、プライベートとはいえある程度の「盛り」はあるでしょう。一般素人だからとて、文章を書いて公にするというのは、大なり小なり「盛り」という名の整理整頓が必要だからです。でも、パートナーと上手くいっていない人だって、「さすがにこれ以上は書けない」という意識が働いているはずですから、やはり、上手に恋人や家族と付き合っている人と、いつも相手の事で悩んだり、恋人ができない人との間には、ぞっとするほどの乖離があるのではないか。





要するに、愛し方が下手なのですよね、上手くいかない人は。ここ、いきなり要しちゃダメですか?




本書は、とても容易な言葉の数々を使い、人生の様々なステージで相手を「上手に愛する」エッセーが収録されています。当然、夫婦だとか恋人同士といった、特定の異性を想定したものがターゲットですが、もっと大きな視野に立って、かけがえのない友人や仕事でのパートナーへの愛し方も含まれる。読んでいて、そんな事を考えたりも個人的にはしました。




よく知られているように、西洋(キリスト教)から【Love】という概念が輸入された時、私達の先祖は訳し方に困ったと言います。今では「愛」という漢語にネガティブな匂いは感じられなくなってしまいましたが、昔は必ずしもそうではありませんでした。男女間での「愛情」も、「色」など他の字が当てられる場合が多かったのであり、例えば親が子を「愛する」という感情も、「慈」といった概念が使われていたわけです。



苦肉の策として、【Love】は“お大切”と訳されたと聞いたことがあります。




ちょっと笑ってしまうような話かもしれませんが、しかし私は、現代日本で、もっと「お大切」くらいのおおらかな気持ちで、【Love】という概念を取り込んでみてはどうなんだろうという、ある種の仮説を持っています。言い換えれば、相手を普通に大切だと思う気持ちを、「愛している」という言葉で表してもいいのではないか。



今日のブログは、要してばかりで申し訳ありませんが、一言で敢えて要約するのなら、現代という時代は「相手を大切に思う」ことに対して、不器用な人が増えている時代だと思っています。愛が足りないのかもしれません。




分かっているようで分かってない、実践しているようで実践できていない、目からウロコの言葉がたくさん出てきます。さまざまな年代の、男女それぞれに読んでもらいたいと思いました。恥ずかしくてもレジに持って行ってください。
by ANB27281 | 2012-10-28 17:12 | レビュー

悪知恵という名の福音

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仕事ができない部下はネジだと思えば腹も立たない?「生きる悪知恵」を身につけよう!






西原理恵子さんの魅力が、悩める男女を今回も救ってくれました。



苦労をたくさんすれば良いというものでは無いと思いますが、苦労を通じて「優しさ」を身につけた人。また、その優しさで世界を見る事ができる人は、やはり強いし、圧倒的な魅力がある。西原さんの作品のどれにも通じるものは、そんな優しさだと思ってきました。




「悪知恵」だとか「正しくない」とか書いてありますが、薄っぺらい正義だとか正論など吹っ飛んでしまう、人生のリアルな格言に満ちています。回答の最後に結論を一言でまとめたものが書かれているのですが、座右の銘でトレイに書いておきたいほどです。トイレかよっ。





《働く嫁ほどこの世でありがたいものはなし。》
*失業後派遣だった妻が正社員となり「主夫」になるのに抵抗がある男性への回答




《そのうち死ぬから、放っておけ》
*義母から「早く子供を」とのプレッシャーを受ける女性への回答




《空気読めなくても許される人間になれ》
*「空気が読めないヤツだ」と人から言われる男性への回答






家族や仕事、はたまた「男と女」といった問題が、かつてと比べて窮屈に論じられるようになっている気がしています。それは、経験に裏打ちされていない空論が、なぜかは分かりませんが幅を利かせるようになってきたからかもしれませんし、また、他人と関わることで傷ついたり、逆に傷つけてしまうのではと不安になる人が多くなったからなのかもしれません。



そんな時代だからこそ、波瀾万丈の人生をもがきながら経験して、相手に対する強い気持ちを優しく投げかける事ができる、西原理恵子という作家がこれほどまでに受け入れられるのではないかと思ってきました。不透明な空気がただよう時代にこそ読みたい、「真っ当」で「正しい」ヒントが満載です。
by ANB27281 | 2012-10-09 06:52 | レビュー

名盤への敬意をこめて

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発売40周年(!)「リ・マシンド」がお勧め!






カバー・アルバムとか、トリビュート・アルバムと呼ばれる作品があります。過去の名作とか、非常な名声をすでに得ているアーティストの楽曲を、本人以外の音楽家が演奏し録音されたものです。




少し考えてみると、少なからずの「名曲」を収録するわけですから、ある程度聴き応えのある作品に仕上がりそうなものなのですが、まぁこれが往々にして退屈である。割合に有名な人が思いがけないようなカバーをしていると、ついつい「お!」と思ってしまうわけですが、やはり実際に聴いてみるとさほど心が動かされない事が多い。




これは一体どうしてだろうと考えてみるに、1つは当たり前と言えば当たり前だけど「オリジナルは超えられない」という理由がある。面白い物見たさに1回や2回聴くなら、レコードがすり減るほど聴いたであろう原曲を聴いた方が普通はよほど味わい深いでしょう。



それからもう1つは、すべてがそうでは無いと思うしそれ自体が悪いとも言えないのですが、どうしても企画そのものが“小銭欲しさ”みたいになってしまって、聴いていてなかなか感動が湧かないというのも、あるかもしれない。悪意は無いのでしょうが、それこそゼロから作品を築いたオリジナルに比べれば、どうしてもトーンダウンというのは否めないでしょう。





だから、今回伝説の名盤として知られるディープ・パープルの「マシーン・ヘッド」が、とても有名なアーティストたちにカバーされて1枚のアルバムになったと聞いても、さほど関心がありませんでした。あのメタリカが、「マシーン・ヘッド」のレコーディング時に録音されるも、結局アルバムには収録されずシングル「ネヴァー・ビフォア」のB面として日の目をみた曲として知られる「ウェン・ア・ブラインド・マン・クライズ」を演奏してると知り、まあ聴いてみるかと思った程度というのが偽らざる動機だったと告白します。






前置きが長くなったかもしれませんが、このアルバムはとても素晴らしいカバーアルバムです。





おそらくハード・ロックと呼ばれる音楽に、最もその後影響を与えたアルバムの1つである「マシーン・ヘッド」が1972年に発表されてから、今年は40年目の節目です。英国の音楽雑誌「クラシック・ロック」が企画したから、と一言で言い切ってしまうのは乱暴かもしれませんが、エグゼクティブ・プロデューサーを務めたドリュー・トンプソンとロビン・ハーリーも含め、参加アーティストのディープ・パープルに対する敬意が全編に溢れています。



先述もした、メタリカの演奏がおそらくハイライトだと思いますが、カルロス・サンタナ、ブラック・レーベル・ソサイエティ、チキン・フット、アイアン・メイデン・・・そうそうたる音楽家たちが、実に楽しそうに「マシーン・ヘッド」への惜しみないトリビュートを披露してくれました。時にオリジナルに忠実に、時に敢えて原曲をみごとに解体するかのようなアレンジの数々は、聴衆としてカバー曲を聴くときの醍醐味の1つだと思いました。



個人的に収穫だったのは、オーストラリアを拠点に活躍するボーカリストのジミー・バーンズと、若きブルース・ギター界の星ジョー・ボナマッサなどが演奏する「レイジー」です。まさしく黄金の第2期ディープ・パープルが現代に蘇ったかのような演奏が素晴らしく、とりわけオルガンを担当したアーラン・シーエルバウムが、敢えて故ジョン・ロードそっくりな奏法の中に個性を発揮していて、今アルバムの中でも白眉な曲に仕上がっています。



初回限定版には、ライブ演奏のほかメイキング映像が収録されているのですが、この中でチキン・フットのギタリスト、ジョー・サトリアーニが次のようなコメントを寄せています。



《それで(「マシーン・ヘッド」の)オリジナルを聴き直すと、その意外な繊細さに驚かされるんだ。そんなに音数も多くなく、リッチーも意外と弾いてない。入ってくる時も凄く繊細なんだ。イアンは軽いシャッフルを叩いているだけだし。でも、何故だか凄く大きいんだ》



ハードロックやヘヴィメタルの「教典」のように言われる事も多い、アルバム「マシーン・ヘッド」ですが、実際に改めて聞いてみると、ブルースを元にとてもデリケートな音作りをしているのに気づかされます。クラシックのフレーズを織り交ぜた演奏は、当時アートロックと呼ばれたこともあると聞いた事がありますが、狭いジャンルで語りきる事ができないからこそ、40年の時を経て世界中で愛されていると言って良いのかもしれません。長年オリジナルだけを聞いていると、自らの経験も重なって1つの先入観にも似た感情が芽生えるのかもしれませんが、そうした間違いをふき払って、新しい楽しみ方を教えてくれる。カバー・アルバムにはこうした可能性もあるのだよなと、ある種の理想のようなものを感じずにはおれません。



大変、味わい深い音楽作品です。
by ANB27281 | 2012-10-05 16:23 | レビュー

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〜ふかいことをおもしろく〜「日本語教室」へようこそ!








井上ひさしさんのお書きになったものを最初に読んだのは、大学1回生の時に手にした「日本語相談」でした。現在では、新潮文庫から各回答者ごとにまとめられた文庫が出ていますが、もともとは週刊朝日に読者から寄せられた、日本語に対する素朴な疑問や質問に4人の日本語の達人が解答するという、人気連載をまとめたものでした。


私はそれまで、言語としての日本語をさほど意識して暮らしていなかったので、この本をきっかけに回答者の方が書いた本を読んだりして一気に日本語の魅力に惹かれていきました。英米語学科に進んだのを後悔したほどです(笑)。その中でも、井上さんの文章はとても「やさしく」心にしみました。



井上さんと言えば、例えば「私家版・日本語文法」という大変な名作がありますし、日本語について総括的に考えるのなら、あるいはもっと良い本もお書きになっているかもしれません。今日ご紹介する「日本語教室」は、上智大学で2001年から4回に渡って行われた講演会を、1冊にまとめたものです。専門書に比べれば井上さんらしい脱線(?)も多いのだけど、その分読みやすさという点と、それから2000年以降という、比較的最近に井上さんが日本語についてどうお考えになっていたのかが分かるという点とで取り上げます。



私自身は、「言葉は生き物なので時代時代によって変わって当然」という立場に理解を示した上で、しかしそれでも保守的な立場、正当(何をもって正当とするのかは大問題なのですが)に対する最大級の敬意と、意識を持たないといけないと感じています。何でも「みんなが今はそう言っているからそれで良いんじゃない?」では、国語としての日本語はあっという間に体を為さなくなってしまいかねませんし、言葉が崩れるというのは、すなわち一国の国民の思考そのものが“崩れる”という事だからです。



ですから、井上さんが「言葉は常に乱れている」とした上で、《日本の言葉も、小学校で英語を教えようということになったときに、僕は本当に危ないと思いました。すべて、そうやって、言葉は消えていくのです。言葉は、実体がない。人間がそれを話すまでは、ないのと同じです。人間がそれぞれ持っている精神を、言葉というものに託したときに、つまり人間がいてこそ言葉は生きていくわけです》(「日本語教室」P.57)とおっしゃるのが、とても重く感じられましたし、《英語をちゃんと書いたり話したりするためには、英語より大きい母語が必要なのです。だから、外国語が上手になるためには、日本語をしっかりーたくさん言葉を覚えるということではなくて、日本語の構造、大事なところを自然にきちっと身につけていかなければなりません》(同書。P.20)というところも、今一度考え直したいなと感じました。




「言葉・言語」を考えるというのは、思っている以上にややこしい問題を本質のところではらんでいます。1つは、“ここまでいったら「あがり」だよ”というゴールが無いのもあって、私達は大人でもまるで素人の様に言葉に対して不安や自信の無さがあるにも関わらず、もう1つは毎日特に考えなくても意思の疎通ができるといった、外国語を話す時とは比較にならないほどの「プロ意識」みたいなものを、誰しも(一応)持っているからです。



何かとややこしい問題だらけではありますが、しかし言うまでもなく私達はこの日本語を使って、人を説得したり情報を交換したり相手をののしったり大切な異性に愛の言葉をかけたり怒ったり笑ったりしているわけですよね。そういった深い部分を、一級の文芸と話芸をお持ちだった井上さんの言葉でやさしく考える事ができるというのは、私は本を読む最大の愉しみの1つではないかと思います。



10月2日放送のラジオ「その場しのぎの男たち」でも、少し取り上げてみようと思っています。
by ANB27281 | 2012-09-23 17:30 | レビュー

Superflyという名の挑戦

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冒険作!Superflyの最新作「Force」





4枚目(Fourth)のアルバムにして、Superflyというバンドは力(Force)を込めて新しい1歩を残しました。




非常に【ロック】色の濃いアルバムだと言われています。各種レビューでもそうですし、雑誌のインタビューで越智さん自身も【ロック】【ライブ感】というのをキーワードとして用いている。



敢えてむちゃくちゃステレオタイプな評価をお許しいただければ、Superflyには60〜70年代に活躍した、イギリスやアメリカのロックバンドに対する称賛を軸とする音楽性に、越智志帆さんという稀代の女性フロントマンを擁したグループという一面があります。



そうだとしたなら、今作「Force」は、ロックアーティストとして彼らの集大成なのではないか?



結論から言えば、それは違います。ニューアルバムで越智志帆さんと多保孝一さんは、とんでもない挑戦をしています。



1stアルバムから一貫して、Superflyは丁寧な音作りとプロダクションを通じて、ビンテージロックの息吹を継承しつつ、むしろJ-POPと呼ばれる歌謡曲ファンにこそ支持を受けてきたと感じています。前作のツアーも、実はこっそり(笑)大阪で参加していたのですが、たぶんローリング・ストーンズやフリートウッド・マックなど、聴いた事もなければ存在さえ知らないのではというファンで一杯でした。



もちろんね、そんな昔のおっさんの事なんか知らなくて良いのですよ。Superflyの凄いところは、何度でも書きますがそうしたビンテージロックに最大の敬意を払いつつ、自分たちの音楽として完全に消化し、実にPOPな越智志帆という女性のキャラクターの演出に成功している所だからです。


そうした、リッチなプロダクションが今までだとしたら、今回彼らは敢えて荒削りな音楽を出してきたと思います。越智さんは、アルバム作りを通してパートナーの多保さんに、上手に整っている曲じゃなくて、気持ち一発で作っているようなものをとリクエストされたそうですが、ギターのリフ、曲の構成など、なるほどシンプルになったのではないか。彼らの代表曲の1つになるであろう名バラード「輝く月のように」も、よくよく聴くと基本はとてもシンプルな構成なのが分かると思います。


そうした意味で考えると、今までのSuperflyが「ロック」の魅力も感じさせる「ポップス」だったとしたら、上質の「ポップス」に「ロック」の生き様を取り入れた作品なのでは無いか。生き様なんて、何も大げさにと言われるかもしれません。実際大仰だよね。でも、そんな感想を持ちました。


ロックな生き様と言っても、越智さんが急に荒々しくなったとか、そういう意味ではありません。むしろ、魅力一杯のキュートで等身大な歌声に益々磨きがかかっている。

そんな表面的な事ではなくて、例えば今までSuperflyは、作曲家である多保さんとアーティストである越智さんとの分業制による仕事の進め方を常にされていたようですが、今回からコミュニケーションをしっかりと取り、話し合いをしながらアルバムを作るように変更したそうです。また、今までだとわざとビンテージロックのリフを「パクる」ような曲を書いてはオールドファンをニヤリとさせてくれていましたが、「'60〜'70年代の音楽に憧れがあって、そういうリフからスタートする曲を作っていましたけど、私たちはリアルタイムじゃないので、憧れでしかない。だけど、あのときに感動したリフとかを消化したうえでできたと思うんです」(「WHAT's IN?」10月号P.58〜59)と本人も告白されるように、今までのスタイルを意識的に変えて行こうとするムードが、音から小気味良く伝わってくる。そんな小さな積み重ねこそが、本当の意味でのロックっぽさかなと思いました。




「暑苦しいアルバムを作りたかった(笑)」と越智さんはおっしゃっていて、初回限定にはなんとアルバム収録曲である新曲を、順番通りにライブ録音したライブアルバムが「おまけ」として付いているのには仰天しましたね。暑苦しい(笑)。こうした画期的な挑戦ができるのも、今Superflyというアーティストが、良い意味でアグレッシブな旬を迎えているからだと思います。





《本当は泣きたい 泣きたいんだ

 孤独に震えている

 迷い悩んで 後悔して

 それでもここにいたい

 愛したい 愛したいよ

 あなたの全てを

 ぶつかり許して 信じ合える

 強さが欲しい》(Superfly「Nitty Gritty」)





Superflyは、とても良質の成功曲線を描いていると感じてきました。ここで言う成功とは、楽曲が売れて金銭的にとても裕福になったという意味ではありません。もちろん名作の名に値するだけの報酬は得ているに決まっていますが、とても自由に、楽しく自分たちの音楽をできる環境を手にして。そういう真の意味での豊かな成功をしっかりと手にしているなと感じるのです。それでいて、少しもおごる事なく、女性らしい優しさと、それから自分の弱ささえ少しも嫌味なく詩にのせる。そうした、越智さんのシンプルな強さこそが、ロックアーティストとしての彼女の魅力であり、普遍的なメロディが大勢の聴衆の心を掴んで離さない、ポップバンドとしての真骨頂ではないか。



2012年、大手J-POP界で一二を争う力作の誕生です。特に普段女性アーティストを聴かない男性も、ぜひお楽しみください。
by ANB27281 | 2012-09-21 14:20 | レビュー

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もっと毎日の食卓にスパイスを!「S&B社員のとっておき赤缶カレー粉レシピ」はこちらから。





ここ最近、食品メーカーや飲料関係の会社からユニークなレシピ本が出版されるようになりました。きっかけはベストセラーになった「体脂肪計タニタの社員食堂」あたりだと思いますが、従来の料理人やタレントといった個人では無く、それまで裏方だった「会社」や「商品」にスポットをあてるという手法はおもしろいですよね。カゴメ株式会社が出した「カゴメトマトジュースレシピ」とか、カルピス株式会社が出版した「カルピス社員のとっておきレシピ」とか。料理にカルピス?・・・おいしいです!



1950年に国内初のカレー粉として発売されて以来、プロの調理人から家庭まで愛されているS&B赤缶カレー粉。私も、家でカレーを作る際ベースのカレー粉として重宝しているだけでなく、魚や鶏肉をソテーなどする際、アクセントをつけるスパイスとして楽しく使っています。




カレー粉は、カレールウを作るためだけのスパイスではありません。胡椒などがそうであるように、和食から洋食まで幅広く使うべきです。




定番とでも言うべき、バターチキンカレーや牛すね肉赤ワイン煮込みカレーといった「カレー」レシピから、経験者の方ならご存知の「和食にカレー粉を使う」レシピなど、本格からB級まで簡単でおいしいレシピが目白押し。ところどころ挿入されるコラムも、読み応え十分な内容です。




家庭料理だと、「カレーは市販のルウを買ってきて作る」という方がまだ多いと思います。各メーカーからおいしく個性的な「ルウ」がたくさん市販されているのはみなさんご存知の通りです。それはそれとして便利に食べつつ、カレー粉を使ったカレー料理の世界に挑戦してみませんか。「香り」「辛味」「色づけ」の要素が、驚きの配合で入った「魔法の粉」で、毎日の食卓がグッと豊かになるのは、間違いありません。
by ANB27281 | 2012-09-12 15:30 | レビュー

ライフログの技術

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洋泉社MOOK 「ライフログの技術」








「ライフログ」という言葉が、ここにきて俄然光を浴びています。NHKが春ごろテレビで大きく取り上げたのも、その理由の1つだと思われます。



よく知られているように、ログ=logとは「航海日誌」といった英語圏の言葉で、日本では日記と訳されることもあります。現在では、もっと広く「記録」といったイメージでとらえておけば良いかもしれません。さすがに今ではもう説明もいらないであろう、【ブログ】という言葉も、web logの略語であり、インターネットユーザーを中心に今で言うブロガーが出現しはじめたころは、「ネットに自分の“日記”などを書いて何がおもしろいのだ?」という意見が多数ありました。今となっては懐かしい話です。



聞き慣れないという方に、簡単で少し強引な解説をするなら、「ライフログ」とは個人の生活全般=lifeを丁寧に記録することで、新しい価値を創造していく試みです。読んだ本やその日食べた食事などをブログやSNSサイトに投稿している方がたくさんいるでしょう?最近では、1日お金をいくら使ったかといった家計簿みたいな使い方や、ダイエットの状況をつぶさに投稿している人もいます。こういったもの全般を、ライフログと言います。多分。



本書は、その大部分をPART 1「ライフログの達人たちの使い方に学ぶ」というコーナーに費やしています。ネットのプロが、どのようにライフログを形成しているのか、とても興味深く読みました。勝間和代さんや、超人気ブロガーのちきりんさん、会社社長の古川健介さんなど、なるほど達人はこういう努力をやっているのかと素直に感心しましたし、私自身ブログこそ最近はあまり書いていませんでしたが、Facebookを使って毎日投稿を続けていて、もっとポジティブで有益な使い方は無いだろうかと思っていただけに、さっそく取り入れようとみようという言葉がたくさんあります。とりわけ



《また、日々のことを書くのは“思考の整理”をするうえで非常に有効です。(中略)人の話を聞いてわかるというのと、聞いたことをまた違う人に伝えられるようになるのとではまるで違います。》



という、フリージャーナリストの漆原次郎さんの言葉は個人的にとても深く感じました。例えば、私は今こうして自分が読んだ本についてブログに記事を書いているわけですが、読んだものをアウトプットしようとするとき、思った以上に読後感がモヤモヤしていたりするのに気がつくことが多い。そこを整理してウェブ上のログ=ブログに残しておき、さらに時間がたった後で読み直してみるのも、意味があることだと感じます。



ただし、mixiでもTwitterでもFacebookでも、それから「ノマド」などのIT流行語でもいいと思うのだけど、こうした新しいメディアや価値観が出てくると、実際の価値より過剰なまでに大きく評価されるものだ、ということも肝に銘じておきたい。これはあくまで個人的な価値観かもしれませんが、私は以前ブログを毎日更新していて、また現在だとFacebookでかなり頻繁に「今日食べたもの」を投稿しますが、可能な限り「今日のランチはカルボナーラ☆おいしい〜」みたいな記事にしないように努めています。もっと具体的に記せば、

1.よほどその店を推薦したい場合

2.店もいいが、いっしょにタグ付けなどした友人との様子を共有したい

に気をつけています。さらにいえば


3.そのお店へのチェックインや料理の写真を足がかりに、お店そのものとは本来関係が薄い内容の記事を書きたい場合


というのもある。美味しいお蕎麦屋さんの蕎麦を紹介しつつ「夏の蕎麦は犬も食わぬという諺が昔はありましたが、現在は夏でも香り高い蕎麦をさまざまな努力によって品質管理されているお店も多くなりました。ところで・・・・」といった具合です。




「ウェブはバカと暇人のもの」等の著書で一躍人気になった、中川純一郎さんが本書にも寄稿をされていて、他の達人とは1味も2味も違う異彩を放っていますが



《「目立ちたい」「儲かりたい」という目的でライフログをつけるのは、ちょっとどうかと思う》

《第一、非公開といってもネットに流すのだから、見てもらいたいという欲求がどこかにあるはず。よく「このブログは備忘録です」という言い方がありますが、本当に備忘録ならオフラインのテキストファイルやワードで残せばいい。》

《承認って普段から実績があれば勝手にされるものだり、自ら「盛る」べきものではない。》



といった強い言葉に、ドキリとさせられます。刺激的なタイトルや発言で、ともすると皮肉屋みたいに言われることもある中川さんですが、私はとても愛にあふれる人だと感じています。




先にも記したとおり、私はこの「ライフログ・ブーム」には懐疑的なところが大きいですし、例えば勝間和代さんが体重をライフログに記録されているのは良いとして(人に見られているというのは、それだけで効果があると思います)、タニタと海外製の体重計を2つ使うとか、iPadを4台、レッツノートを4台使うと便利ですとか言われても、「はぁ?」と思っちゃったりもします(笑)。



いずれにせよ、好むと好まざるとに関わらずスマートフォンの普及や、ソーシャルメディアサービスの画期的とも言ってよい向上により、巷は「ライフログ」に溢れていますし、おそらくこうした流れは当分終わらないと思います。「自分が食べたものを、ただネットにあげて何がおもしろい?」とおっしゃる方の気持ちも、痛いほど分かりますが、そうしたノイズのような投稿を自ら上げることなく、メディアリテラシーの向上を図ることは、プロだけではなく私たち素人にこそ、今とても大切なスキルなのではないでしょうか。
by ANB27281 | 2012-09-02 16:22 | レビュー

鳥取県米子市で営業する、スバル代行社長の個人的なブログです