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月から帰還した王者

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17年目にして円熟の境地。VANDENBERG'S MOONKINGSのデビュー・アルバムはこちらから!






エイドリアン・ヴァンデンバーグが、ハード・ロック・シーンに帰ってきました。デイヴィッド・カヴァデールと2人で来日した際のアコースティック・ライブ「STARKERS IN TOKYO」をWHITE SNAKE名義で発表して以来ですから、実に17年ぶりです。





素晴らしい作品です。ホントに。いろいろ修飾語句を考えましたが、他に言葉が見つかりませんでした。ごめんなさい。





80年代初頭に「VENDENBERG」として鮮烈なデビューを果たしたエイドリアンは、当時からここ日本で熱狂的な人気のギタリストでした。アメリカの脳天気さとは無縁の、オランダという異国情緒たっぷりな哀愁のメロディと圧倒的なテクニックは、今聴いてもまったく色あせるところがありません。




この当時のエイドリアンこそ最高とおっしゃる方も少なくないと思いますが、しかし個人的にはブルースの影響を色濃く出しながら、ハード・ロックの1つのクライマックスを迎えたWHITE SNAKEでの活動と作品が、やっぱり素晴らしいと思うのです。今回の復活作も、この当時の、LED ZEPPELINら70年代ハード・ロックのエッセンスを、今に伝える音作りとなりました。




音作りといえば、アムステルダムの近くにある、有名なレコーディング・スタジオで、60年代・70年代のビンテージ機材を積極的に使った、アナログ風の音作りも、往年のファンをニヤリとさせることでしょう。こうした試みは、一歩間違うと自己満足な懐古趣味に終わることが少なくありませんが、エイドリアンの感動的な演奏を前に、むしろ若いファンには新しく映ると思います。





娘の出産を迎え、子供が成長するまではそばにいたいと、音楽家から画家としてのキャリアを大切にしてきたと聞いています。エイドリアン・ヴァンデンバーグのアルバムのアート・ワークが、多くを自身で描いたもので、地元オランダはもとより欧州では人気なのだとか。私は画のことはよく分かりませんが、エイドリアンは17年間ひょっとしたら月で王様(MOONKING)として活躍していたのでは無いかと思いました。




そうした神秘的な仮説を立てなければ、17年もの長い間音楽活動から遠のいていたにも関わらず、こんなに素晴らしいロック・アルバムを作ってしまう説明ができません。繰り返しになりますが、これは昔有名だった人が、当時の栄光にすがって出したアルバムだとか、70年代風の音作りを狙って、今の音楽について行けないおじさんの溜飲を下げさせる慰めの作品などではありません。




類い希な才能をもった人が、静かな情熱を絶えさせることなく燃やし続けてきました。来る時期を迎え、素晴らしい楽曲群を、往年の仲間と新しい世代の音楽家たちといっしょに作り上げてくれました。エイドリアンのギターも良いが、シンガーの歌声がまた良い。シーンを越えて、すべての音楽ファンに聴いてもらいたい作品です。






by ANB27281 | 2014-02-24 06:51 | レビュー

BREAK直前の疾走感!

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メロディ、演奏、そしてルックス!3rdアルバムにしていよいよBREAKの予感「LIMIT BREAK」はこちらから。







メジャー・デビュー作となった前作「LADY MADE」を評して、かつて私はブログでこんなことを書きました。



《無粋を承知で敢えて記せば、他にもっと上手なバンドはいっぱいいます。技巧派と記しましたが、もっとテクニカルなギタリストを擁するメタルバンドははいて捨てるほどいるのですよ。しかし、バンドはあくまで全体から出るオーラが大事。これだけ楽しそうで、こんなにもメロディアスで。ハードでちょっとだけエッチなメタルバンドの出現は、いささか先物買いだと言われても、私は買います。》
(「Lady Madeなメタルバンド」〜それいけ!スバル代行2013年3月31日の投稿)



先物取引が失敗に終わらず、まずはホッとしています。期待に十分に応え、予想を良い意味で裏切る形で、Cyntiaが一回りも二回りも大きくなって帰ってきました。先月ラジオ番組でも紹介した、アニメ「聖闘士星矢Ω」の主題歌「閃光ストリングス」を含む全11曲の構成。多くの曲でプロデュースに関わった、ANTHEMの清水昭男さんの力も大きいと思われますが、もともとの楽曲の持つ“幅”が驚くほど広がりました。



今私は“幅が広がった”と記しましたが、ヘヴィ・メタルバンドとして音楽性がブレないところがさすがです。今までにはなかった、しっとりとしたバラードがあったり、ラストのタイトル・トラックではプログレ風の大作にまで果敢に挑戦しているのだけど、どこを聴いても「これがCyntia!」といった独自性を、きちんと作り上げてしまいました。




前作まで露骨だった「キャバ嬢」風のルックスから、少し落ち着いたところもありますが、昨年夏にリリースした浜田麻里さんのカバー「Return To Myself」のプロモーション・ビデオでは大胆な水着姿を披露し、また、シングル限定盤特典としてビキニTOPを付けるという“遊び心”も忘れていません。頑固なメタルファンの中にはこうした遊び心に眉をひそめる向きもあったと思うのだけど《でも、そういう反応は私たちがあの企画を提案した時から予想していましたし、ある意味、想定内でした。》(雑誌「BURRN!」3月号のインタビューより)、とケロリとかわす心の余裕すら感じさせます。




それにしても、11曲本当に充実したアルバムを、よくぞ作ってくれました。どの曲もギターリフがシンプルでカッコよく、メロディはどこかで聴いたことがあるような親しみを感じさせ、すぐに口ずさみたくなる。男性のメタルバンドにありがちな「ダサさ」とは無縁で、こんなにも明るく、これほど楽しそうで、しっかりと可愛い。いつも指摘していることですが、ハード・ロックとかヘヴィ・メタルって、基本分かりやすくて、カッコよくて、ちょっとエッチなくらいじゃないとダメなんですね。




その意味で、こんな基本に忠実(?)なバンドが、レコード会社からの正当な支援を受けつつすばらしい作品をこの日本国内で発表してくれたことに、私はいささか大げさかもしれませんがある種の感動すら覚えました。4月には名古屋、大阪と久しぶりに東京以外でもライブを行ってくれるようですし、ぜひともそのパフォーマンスを生(ライブ)で観てみたいものですね。
by ANB27281 | 2014-02-15 20:25 | レビュー

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「その前年比に意味はありますか?」この秋オススメは”数学女子智香”が教えてくれるこの本!











ビジネス数学の第一人者、深沢真太郎さんの最新刊は






「数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。」




という名前の本です。ちょっと長い(笑)。





しかし、このタイトルは無駄に長いわけではありません。まさしく「仕事で数字を使うって、こういうことか!」ということが、無理なくすーっと実感として分かると断言いたします。






数学科出身の柴崎智香は、コンサルティング会社からとあるアパレル系の会社にヘッドハンティングされます。そこには、“文系”を画に描いたような、「経験」と「勘」にだけ頼って仕事を進める営業部員たちがいました。






本書は、数字を軽視してしまいがちな営業部の木村斗真と、先述の柴崎智香2人の会話を中心としたストーリー仕立てで進行していきます。いわゆるビジネス系の指南書(How to)で、マンガやストーリーを中心に説明する本が結構ありますが、筋書きが強引だったり、著者の独りよがりが鼻についたりすることが少なくありません。その点、この本は基本的なところで読み物としてかなり面白いです。読みながら次のページをめくるのが楽しみな数学本というのも、ある意味珍しいかもしれません。




《(木村)「やっぱり俺にはただの屁理屈にしか聞こえないね。だって、俺はいままでこのやり方で“当てて”きたんだ。仮に俺が“予想”しかできなかったとしても、結果を出してきた。ビジネスは結果がすべてだ。別に文句はないだろ」

木村の主張に頷く女性店長もいます。木村がここまでこのブランドのセールスを引っ張ってきたことは事実です。ゆえにショップスタッフからの信頼もとても厚いのでしょう。しかし、彼にはある視点が決定的に抜けています。それを智香は、この機会を使ってどうしても指摘したいのです。


(柴崎)「今の先輩の発言は90%正しいです。確かに、ビジネスは結果がすべてだと私も思います。でも、ひとつだけ抜け落ちている視点があります」
(木村)「いったい何だよ」
(柴崎)「“続かない”ということです」
(木村)「は?だから何がだっての!?」
(柴崎)「先輩の予想が今後も当たり続けるなんてことは、あり得ないということです」》
(「数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです」P.106〜107)




ドット柄ブラウスのセット商品として、今までの「経験」と「勘」を頼りにショートパンツを推そうとする木村に対して、柴崎は「ショートパンツを推す理由は『予想』なのか『予測』なのか」と問います。勘を頼りにした「予想」は、究極的にはギャンブルといっしょであり、ビジネスとしてやっていくためには根拠と規則性を頼りにした「予測」をたてていかないといけない。そんなことを、先輩である男性に対して、彼女は一所懸命に、しかし丁寧に説明していくのでした。





深沢さんの本は以前も取り上げたことがあります。彼は、ごくごく一般的なビジネスシーンで、いかに「数学」が大切か。しかもその「数学」は、難解な用語や公式を多用するのではなく、中学高レベル(あるいはそれ以下)の知識で十分力を発揮するということを私たちに教えてくださってきました。本書もその意味で例外ではありません。「平均」の本当の意味、相関係数の使い方やABテストでわかること、「標準偏差」の考え方と実例・・・毎日普通のビジネスパーソンが目にしている数字を、読み解いて仕事に活かすコツが、分かりやすく、しかも面白く書かれた希有な本です。





「経験」や「勘」だけを頼りに仕事をしてきた木村斗真は、数学を大切にし、数字の意味の重要性を説く柴崎智香と事あるごとに衝突し、当初は「ウザい」と対立しますが、柴崎の情熱ある説明を前に、次第に考えを改めることになります。それは何も、経験や勘というものを否定するわけではありません。もちろん、いわゆる“センス”みたいなところも含めて、経験や勘というのは大切な資質です。ただ、それ“だけ”では弱いというか、いつか来るピンチや危機に対応ができないでしょう。規則性や理論に基づく「数字の意味」を身につけることで、木村は自身の力を大きく伸ばし、人間的にも成長することに最後はなります。







お恥ずかしながら、私自身今までの経験だとか、「ピンチの時は根性で乗り切る!」みたいな性格の持ち主なのもあり、本書を読みながら何度も目から鱗のようなものが落ちる気がしました。柴崎は典型的な「数学女子」で、一見冷たい女のようにも読み取れますが、数字や規則を信じるその1枚裏側には、実際に仕事を進めるのは生身の人間であり、数学やデータが、生身の人間から離れて一人歩きしてはいけないし、逆に生身の人間もデータや数字を正しく読み取るスキルが必要不可欠だという、強い意志が感じられます。





そうした柴崎の意思は、とりもなおさず著者である深沢さんの思いでもあります。感覚や経験だけを頼りに仕事をしてきた私には、心に突き刺さり、大いに反省しつつも感動してちょっと涙が出てしまいました。






来週のラジオ「その場しのぎの男たち」では、そんな不思議な作家深沢真太郎さんをゲストにお招きします。ぜひお聞きください。
by ANB27281 | 2013-09-13 17:29 | レビュー

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あなたは「うれしいさん」それとも「かなしいさん」?親子で読みたい絵本です。








あるところに「うれしいさん」と「かなしいさん」という2人の友達がいました。日常の、なんてことないエピソードで、うれしいさんは悲しくなったり、かなしいさんは嬉しくなったりします。そんな2人が、嬉しくなったり悲しくなったりしながら絵本の最後では・・・。




両面が表紙になっていて、「うれしいさん」と「かなしいさん」が最後真ん中の見開きページで出会う仕組みになっていて、ユニークだと思いました。文章のリズムもよく子供たち受けすること間違いありません。




2011年の東日本大震災を受け、プロジェクト「3.11からの出発」プロジェクトを開始した、東京子ども図書館からの発行。収益は、すべてこのプロジェクトの活動資金に充てられるそうです。シンプルで分かりやすいストーリーですが、私たち大人も、結構しょうもない(?)理由や事柄に対してすぐに「かなしいさん」になっているのかも。発想をポジティブに切り替え、見方を変えるだけでこの世界には「うれしいさん」があふれていると気付かされました。




ぜひ、親と子供といっしょに読んでもらいたい本です。お勧めです。
by ANB27281 | 2013-07-16 13:50 | レビュー

日本の七十二候と旬の食

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「5日ごと」に変わる季節を意識して暮らす!「日本の七十二候と旬の食」を一家に1冊!







岡田准一さんが主演し、原作の小説ともども大ヒットした映画の影響もあるのかもしれませんが、最近「暦(旧暦)」が静かなブームですよね。地元の書店でも、ちょっとしたコーナーが設けてあり人気のようです。



1年365日を72節に分け、それぞれ名前を付けた七十二候は、古くから私たちの生活と切っても切れない関係にある、季節感を失わないための暦の一種だと思うのですが、恥ずかしながらこの歳になるまでほとんど知らずに過ごしてきました。




本書は、その七十二節をそれぞれ紹介しつつ、時候にふさわしい「旬」の食べ物を、見やすい写真と読みやすい文字で紹介したムック形式の本です。



72にも小分け(?)したら、かえって分かりにくいのでは?とも思いましたが、例えば任意のページを思いつくままめくって読むと、若い人でも知っている(でも意識したことはないかも)季節感あふれる行事が紹介してあり、七十二候の考え方が「文化」レベルで私たち日本人の意識に浸透していることを思い知らされます。




例えば今日7月2日は6日までつづく「半夏生」の季節。旬の食べ物として、蛸・毛蟹・ピーマンの3品が紹介してあります。


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半夏生 一年の後半が始まる境目の時期。忙しい農作業にも一段落


蛸 ●関西では半夏生に蛸を食べる

蛸は冬にという地域も多いのですが、関西では夏に好まれ、半夏生に蛸を食べるという地域もあります。マダコは明石のものが有名ですが、瀬戸内海のあちこちで蛸漁は盛んです。生鮮で流通するほか、産地ではハンガーのようなものに掛けて天日干しする干し蛸も作られています。世界で最も蛸を食べるのは日本人。欧米ではあまり食べられませんが、イタリアやスペインでは食べられています。

毛蟹 ●戦後に認められた新しい珍味

カニの季節は秋から冬と思いがちですが、日本近海の毛蟹は一年中どこかで獲られています。六月から七月は北海道の噴火湾海域、七月から八月は胆振地方海域のものなどが出回りますから、夏の北海道旅行でも獲れ立てを食べることができるわけです。おいしい蟹の一つですが、何と戦前までは雑魚扱い。戦中・戦後の物のない時代に売られるようになって初めてその味が認められたということです。

ピーマン ●高湿下で成長する夏野菜の定番

高湿が好きでも多湿には弱いピーマンは、梅雨開けの頃からが露地ものが本格的に出回る季節。トウガラシの品種の一つと聞くと意外に思いますが、形は確かに太ったトウガラシ。辛味ではなく苦味が特徴ですが、このために子供受けが悪いという大人の野菜。日本では長らく緑色のピーマンだけが流通していましたが、最近は肉厚で赤や黄色のカラーピーマン(パプリカ)も店頭でなじみの顔となりました。


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どうです?けっこうためになるでしょう。おもしろいなと思いませんか。おおぶりの1ページに、書かれている文字はこれでほぼ全部。カラー写真も美しくて親しみがあり、読んでいて飽きません。




旧暦だとか七十二候というと、お年寄りにしか分からないとか、今はもう関係ないでしょう?という方もいるかもしれません。しかし、それでも私たちは「土用の丑の日」にうなぎを食べたり、「冬至」の夜には柚子湯につかって風邪をひかないようにしようとするでしょう。「いや、しないよ」という人でも、SNSなどで周りの人が食べたりやったりしているのも見ても、少なくとも"違和感”は無いはずです。そうした、違和感がない共通認識を「文化」と呼ぶとしたら、やっぱり知らないより知っていたほうが多少なりとも心が豊かになりますし、なりより楽しいと思います。



流通の発達や食文化の変遷で「食に季節感がなくなった」と言われる現代ですが、やはり旬の食材は味が違う。古くて新しい先人の知恵が、思わぬ形で復権しつつある。そんな気がしてなりません。
by ANB27281 | 2013-07-02 13:29 | レビュー

英国一家、日本を食べる

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日本の食文化を、イギリス人に教えてもらおう!?「英国一家、日本を食べる」はこちらから。






パリの有名料理学校「ル・コルドン・ブルー」で1年間修行をしたり、三つ星レストラン「ロブション」での経験を本で綴ったこともある、英国のフードジャーナリストが書いた日本の食紀行文です。






"外国人ならではの視点で、自国に暮らす人たちでさえ気がつかない文化をユニークな視点で記す”という本はいくつもありますし、「食」というのは特に文化の違いが目立つ分野ですから、こうした食文化の相違点を指摘した名作というのも数多くあるでしょう。そんな中にあって本書が際立っているのは、奥さんと小さいお子さん2人を連れた、3ヶ月の家族旅行記といった一面があるからです。生まれて初めて目にする相撲力士の姿に圧倒されながらも興味津々な様子や、焼き鳥の軟骨や砂肝にトライしたら意外に美味かったと喜ぶ姿。それをイギリスの一父親として文章に記すことで、日本や日本の食べ物に対する洞察力はさらに深まり、また読者である私たち日本人を大いに楽しませることに成功しました。







《次に寄ったのはだるまという、今や日本で名を知られる串カツ屋だ。お好み焼きと同じく、この串カツ—肉、魚、野菜などにパン粉をまぶし、串に刺して揚げた料理—にしても、いまだに世界で旋風を巻き起こしていないのはなぜなのか、理解に苦しむ。これも大阪のすばらしいファストフードで、天ぷらや焼き鳥—串カツと形態が似ている—と同様、日本を代表する料理として世界中に広める価値がある。串カツの衣は独特で、これまた特別な、濃厚で甘みのある黒光りしたソースを、ひと口大の肉、魚、野菜の串にたっぷりとつけて食べる。
串カツの秘密はとにかく衣にあって、だるまの場合、ピューレ状にした山芋、小麦粉、卵、水に11種類のスパイスを特別にブレンドして作る。薄くカリッとした衣に揚がるのが特徴だ—僕らは、ビーフ、エビ、ウズラ卵、チェリートマト、アスパラガス、チキン、ホタテを食べた。串を揚げるのは190度のビーフオイルだ。ソースは共用の容器に入れてカウンターに置いてあり、「No double dipping(二度づけ禁止)」と英語で書かれている。

ところで、だるまは大阪を象徴する通天閣のすぐそばにあるが—こういう塔も、水族館や観覧車と同じく大都市のシンボル的存在だ—その目立つお隣さんよりもはるかに歴史が古い(創業80年)。僕らはカウンター席に着いたが、小さなオープンキッチンで働くスタッフが身体をかがめたり忙しく動き回ったりするたびに、足元に水が飛んできた。粗末な店かもしれないが、串カツというものを知るのにこれ以上の場所はない。しかも、ウズラ卵とトマトはずば抜けているし、薄くパリッとしていてサンドペーパーをかけたみたいに均一や衣は、口のなかでカリッと割れてとろりとうまい中身と混じり合う。値段は1本50ペンス以下なので、食べすぎると入院する羽目になるというリスクを頭に入れておかないと、どこまでも手が出てしまう。》
(「英国一家、日本を食べる」奇跡の味噌とはしご酒 大阪2 P.208〜209)






日本の文化は良くも悪くもかなり変わっている(らしい)ので、外国の人が書いた文章はどうかすると手放しの称賛か、欧米人らしい偏見がみられるものが多くあります。著者のマイケル・ブースさんは、フードジャーナリストとしての経験と知識を上手に活かしながら、むしろそうした先入観や偏見といったネガティブな部分さえ、私たちに嫌味に感じることがない本を書いてくれました。どちらかというと、そうした外国人らしい素直な「なぜ?」という発信を通して、普段我々が鈍感になったりしがちな、この日本という国の食文化の素晴らしさと危うさが浮き彫りになっている気さえします。




懐石料理からラーメンまで、「日本料理コンペティション」の現場から「ビストロSMAP」収録スタジオまで。日本料理と食文化について、可能な限り多くの内容を好奇心と異文化への敬意、イギリス人らしいユーモアたっぷりに紹介してくれました。色んな読み方ができる本です。おもしろい!
by ANB27281 | 2013-06-16 18:35 | レビュー

3分間育児!?

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「忙しい」からこそできる育児!ビジネスマンのための育児本の決定版はこちらから。








「イクメン」が、ブームになって久しくたちました。子育てに積極的に関わる男性を指すこのこの言葉も、いろいろなメディアで取り上げられたり問題が提起されることで、ずいぶん市民権を得てきたのではないでしょうか。





私自身、8年前に長男を授かったときから、ブログで子育ての悩みや感じた疑問点を発信してきたからか、子育てに関する講演会などに何度か呼んでいただいた経験があります。そこで感じるのは、私より一回り下の世代、具体的には20代のカップルとお話をすると、男性が肩肘はらずに、ずいぶんスムーズに子育てに取り組んでいらっしゃるなあということです。





子育てに男性が積極的に取り組み、例えば会社の有給休暇まで利用して我が子に時間を割くのは意義があることだと思っています。しかし「男は家庭より仕事!」といった意識も根強いですし、現実問題としてある程度経済的に恵まれていなければ、どちらかが家庭を顧みずともたくさん稼がなければならないという、「現実」はあるでしょう。いくら可愛いと思っていても、メシが食えなければどうしようもありません。




男性の多くも、我が子は可愛いに決まっているのです。だけど、仕事のことを考えると世間で声高にさけばれているような「イクメン」にはなれないーそんな風に悩んでいるパパさんが、結構いる。本書は、そんな忙しいビジネスマンにむけて「たった3分の育児」を提唱しています。




《よくある話が、「だから仕事の時間を効率化して、24時間のうち少しでも多くの時間を家族時間にあてよう」というロジックです。
でも、ちょっと待ってください!なんでまたそこで意識を仕事に向けちゃうんでしょう?それこそが仕事優先の潜在意識の表れではないでしょうか。
もっといえば、その発想、会社にとって都合がいいことばかりだと思います。
(中略)
便利なものができると、「これで仕事を効率化しよう!」ということになりがちです。便利なものを優先的に仕事に投資するクセが、広く世の中にはあるようです。なぜそんな便利なものを、まず直接、家庭時間に使わないのでしょう?》
(「忙しいビジネスマンのための3分間育児」おおたとしまさ著 ディスカバー新書P.38)





著者はこの中で、夫婦が2人で仕事や家事といった時間の絶対量を追い込んでしまうと、“限界への挑戦”のような「サバイバル育児」になってしまうと指摘しています。無理をせず、持続可能な「サスティナブル育児」を目指そう、と。




「3分間育児」の具体例は、実際の本を読んでみてください。すでに実践している方にとっては当たり前のことでも、案外「ああ!それ気がつかなかった」というものが見つかると思います。なるほど、と思えば、明日からーいや、今日からさっそく取り入れればいい。何しろ3分ですからね。




著者はどの程度意識をされて書かれたのかはわかりませんが、個人的には最後まで読んで、夫婦間の心の風通しを良くする方法を考える本だなと感じました。仕事の合間に一生懸命子育てに参加しても、妻に喜んでもらえない、ヘタをすると「邪魔」と言われるパパ。逆に、さほど無理をせず極端な話1日3分程度しか関わらなくても、子供を通じて妻との絆を深めるパパ。お互いの立場や人格を無理なく思いやり、まずは3分から、少しずつ子育てを夫婦で共有できるようになったらいいなと、そんな事を思っています。
by ANB27281 | 2013-05-30 14:15 | レビュー

VERY6月号

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「モテ」を卒業した私たちにも「可愛い」は武器になる!初夏のオシャレもVERYから!










《自分の正しさを証明するために、自分が選ばなかった道を選んだ人を否定したくなることがあります。「働く私が正しい。専業主婦は愚かだ」とか「家にいる私が正しい。働く母親はわがままだ」なんて。互いに自分が正しいと言い張り、相手を蔑む。
 ああけど、それって不毛!ただ違うってだけなのに。違う選択をした人のせいで、自分が貶められるわけじゃないし、不幸になるわけでもない。相手が目障りだという理由は、きっと他にあるのです。
(中略)
その背景の一つには、経済的に逼迫している上に雇用の機会に恵まれない女性の現状があります。働きたくても働けない母親、家にいたくてもいられない母親、それぞれが必死に自分の状況を肯定するために、罵倒し合っている。どっちがちゃんと子育てしているかっていう話になりがちだけど、本音は、どっちがたくさん我慢しているかっていう比べっこです。我慢している方が偉い。私の苦労は正しい苦労だと。だけど、子どもは正しいお母さんを求めているのかな。人から見て正しい幸せを手にしたいのかな。ただ、抱きしめて欲しいんじゃないだろうか。あなたが大好きだよ、あなたと一緒にいられて嬉しいって。そうやって抱きしめるお母さんは、みんな頑張っている。どんな立場でも、子どもを育てることは大変で、そして幸せなことだって、一緒に言えないだろうか。選んだ道が違ったって、子どもにとってたった一人の母親であることは同じ。それは等しく、尊いことだと思う。》
(「VERY」6月号 小島慶子「もしかしてVERY失格!?)








今月のVERYに掲載された極上のエッセー。もう、小島慶子さんのエッセー読むだけにでも毎月VERY読んで良いと思います。






話は変わりますが、このエッセーに限っていえば「母親」と「子ども」の言葉を、「男」と「女」に変えても成立しますよね。恋愛に、「正しい」という言葉は似合いません。このあたりはまた時間を見つけて恋愛ブログで書いてみたいと思います。







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またまた話は変わりますが、今月のVERYの特集“ママになって、「もう一度就活!」服」のコーナーにお洒落なカフェ(?)が出ているなと思っていたら










代官山のgreeniche&lab.LABARだがん(笑)。






ぜひ読んでみてください。
by ANB27281 | 2013-05-21 17:37 | レビュー

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《いま、アンアンのHPを見ると「ホンネのネ」という小さいロゴが入っている。クリックすると「彼女になったら、のびるタイプです私」「2人でいると節電できるね」「年下の恋人をつくろう」といったコピーが浮かびあがってくる。とはいえ、私にはもはやアンアンという女の顔がよく見えない。アンアンの本音が、どこにあるのかよくわからない。というか、ホンネのネって何だ。今のアンアンは、時代の先端を率先して進むような華やかさはない。女の仕事や女のセックスや女の生き方を提案する熱さはない。セックス特集では、過激な保守路線に走ったかと思えば、最近は毎号のように韓流アイドルの肉体美を見せている。近年のアンアンで目立ってヒットしたのは、「断捨離」特集だろう。断る力、捨てる力、離れる力、三つの力で人生をシンプルに生きようという提案は、以前ならば「シンプルがオシャレだから断捨離しよう!」というノリだったはずなのだが、断捨離、というどこか仏の香がするイメージと同様、生きるのが苦しそうな人たちを優しく導くような修行のような提案だった。まるで、断れない捨てられない離れられないことが現代の病のようである。だからだろう、断捨離も楽しい提案というよりは、よりよい人生を真面目に歩むための自己啓発にみえてしまうのだ。40代になっても自己啓発に依存し、どんどん物を捨てまくり、誘いを断りまくり、がらんとした部屋に住む女なんて、ちょっと哀しいじゃないか。友だちになんかなりたくないじゃないか。アンアンがどんな女になったのか、40歳のアンアンがどんな女なのか、私にはよくわからなくなっている》
(「アンアンのセックスできれいになれた?」P.195〜196 北原みのり著 朝日新聞社)




日本女性のセックス観はどう変遷してきたのか?「アンアンのセックスできれいになれた?」はこちらから。



古い読者の方にはご存知の人もいるかもしれませんが、私は雑誌「an・an」のセックス特集を、過去7年間ブログで毎年のようにで批判してきました。それは、もちろん女はセックスを語るんじゃないという意味では全然無かったし、また反対に女性はもっと性に貪欲であるべしという、リベラル(?)な気持ちとも必ずしもいっしょではありません。そうではなく、この我が国でもっとも歴史がある「女のセックスを語るメディア」が、何か急に音を立てておかしくなってしまっているのではないかという、拙いながらも“予感”があったからだと思います。




著者の北原みのりさんは私の4歳年上の女性。女として、40年間の「an・an」を丁寧に解説しながら、89年の「セックスで、きれいになる」特集をピークに「an・an」がどのような路線変更をしてきたのかを知るのは、ミステリー小説を読むスリルさえ感じました。自らを「バイブ屋」と語る北原さんは、“怒りの人”。女を、それ以上に男を。今の「an・an」にも、「an・an」に登場する文化人やAV女優にもとても怒っている。それはとりもなおさず、「女の性」を解放したいという、彼女の情熱の表れなのではないでしょうか。




個人的には、私の周りの女性は多少の例外を除いて、もっと大らかに、たおやかにセックスを楽しんでいると思っているので、正直「何もここまで?」という違和感も無いではありませんが、それは私が鈍感な男性だからなのかもしれません。女性のためのアダルトグッズショップの代表が、「an・an」のセックス特集を通して語った内容は、愛のないセックスの容認や気持ちの良いマスターベーションの解説だとかセックスのテクニック指南といった現場と通り越し、日本の戦後から現在までの「女の文明論」でさえある。そんな感想を持ちました。
by ANB27281 | 2013-05-21 10:44 | レビュー

快楽上等!

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「面倒くさい」「飽きた」を封印せよ!ポジティブな女と、それから男にも読んでもらいたい「快楽上等!」はこちらから。









フェミニスト・女性学者の上野千鶴子さんと「女ひとり寿司」をはじめユニークな視点とキャラクターが人気の著述家湯山玲子さんの対談集。30代後半という世代(若造)と、男性だからなのか、途中少ししんどい部分もあったけれど、おおむね楽しく読むことができました。









今、熟年世代の女がガンガン「快楽」の世界に進んできています。婦人公論の別冊という形でスタートした「快楽白書(けらくはくしょ)」も、はじめは雑誌「an・an」のセックス特集のお年寄り版(失礼!)かなくらいに思っていましたが、毎年深い内容とリサーチに基づく紙面作りを、最近私はただの好色を通り越して非常な注目をもって読んでいます。他の媒体やネットでも、ここ最近「熟年層の性」というのが本当にクローズアップされてきました。




言うまでも無く、こうした諸問題は何かとナイーブなところを多分に含んでいますので、“赤裸々”に有名人だとか影響力のある方が「ぶっちゃけ話」をするか、データを恣意的にとりあげて小難しい話をするか、それか、「無かったこと」にするのが今までだったと言っていい。






「女」という性に対して、その評価はさておき(私はフェミニズムについても学生運動についてもあまりに知識がありません)、これまでずっと深く、また良い意味で“かたよった”考えを発信しつづけてきた、上野千鶴子さんと、それから湯山玲子さんの対談は、予想を裏切らないほどの鋭さと赤裸々さをもって、高齢の方でなくても多くの女性に問題提起を投げかけてくれたと思います。





多くの男たちは、まだこの問題の根の深さとリアルさに、あるいは気づいていないのかもしれません。






結婚・出産・恋愛・セックス、そして子育て・・・女性の人生にとって避けては通れない諸問題に、簡単な「解答」などあるはずもありません。また、心休まる糸口がこの本に書かれているのかといえば、それも違うのかもしれない。ただ、あまり巷ではみかけないけれど、とても大切なことが、あちこちに「ボソッと」語れていて、いくつか強烈に共感してしまいました。



《湯山 少子化が言われ出して以降の世の中の言説で、私がすごくイヤなのが、「子どものために」であったり「子どもの将来のために」ということが、あまりにも強調されていることなんです。大人であるあなたの幸せは、まずどうなんだと。日本では、大人が自分のために、トクな選択をすることが、憚れるのか。そうまで、イイコでいたいのか、というね。自分の生き方を自分で決められなかったり、自分の欲望をきちっと見つめないでいたり、現状をうやむやにしていることの責任転嫁に、「こどものために」を使ってる狡さを感じるんですよ。》
(「快楽上等!3.11以降を生きる」P.88)



《湯山 しかし、「挿入が絶対だ」と、男以上に女も思い込んでいる。
(中略)
上野 ムラムラだって経験と学習。なのに契約を結んで、「私以外にムラムラするな、ムラムラしてもガマンせよ」というルールを作る。その必要はないと思うけど。
湯山 そういえば、ムラムラの方向が、日本はものすごく狭いですよね。若い妊娠可能な女のみ。最近は、だいぶそうでもなくなっているけれど。
(中略)
上野 日本でも今、風俗は熟女と人妻が熱いという話よ(笑)。》
(同書 P.184)



《湯山 ノーマルな男女関係だって、奉仕のし合いじゃないですかね。
上野 セックスが「気持ちよくない」という子たちのことが、気になるわけよ。
湯山 それは若いからですよ。
上野 学習が足りんってこと?そう来たか、おネエさん。今の反応は予測誤差でした(笑)。
湯山 もっと言うとですね。フェラでオエッとなって気持ち悪いというのは、男性のクンニも同様。しかし、その気持ち悪さを越える喜びは、もう快楽にあえぐ相手の表情っていうやつです。もはやそれは風俗系の奉仕ではないでしょう。やってあげて気持ちいい、やられて気持ちいい、このイーブンさが一番いいんですよ、セックスは。
上野 もちろんそうよ。そうなっていないから、「やらせてあげる」という言い方が出てくるんでしょう。あなたの周辺の女のサンプルとは違うかもしれないわね。でも、学習が足りないって、どれだけやればいいのよ(笑)。
湯山 そりゃ、人生死ぬまで勉強ってことです。》
(同書 P.196)




《上野 ネットが広がって、言葉の力がもう一度、復権しました。上野ゼミの学生が以前、遠距離恋愛を卒論のテーマにしたことがある。アメリカ留学中に、太平洋を越えた恋をした男が、二股をかけた。顔が良くて性格のいい大人しい子と、顔はあまりキレイじゃないけど溌剌とした子と。チャットをしたら、大人しい子とは話が続かなかったんだって。
湯山 なるほど。
上野 溌剌とした子のほうは、言葉遊びもやるし、打てば響くっていうので、結局、その子と恋愛が続いちゃった。対面関係が最高だと言うけど、次元を落としたネットの世界では、言葉がものを言うんだね。
湯山 言葉って上手、ヘタも含めて、人物そのものですからね。また中でも、短い言葉が力を持つ。》
(同書 P.288)




繰り返しになりますが、私は本書に書かれていることにすべて共感しているわけではありません。それは、私が(著者に対して)若いからなのか、それとも男性だからなのか、正直わからない所もある。ですが、ちょうど今年に入ってからスタートさせた恋愛ブログ「恋は手打ちうどん」で、力を入れて主張している、一夫一婦制度への疑問だとか、既婚後の恋愛感情といったイシューについて、強烈にひっかかる部分が少なくなかったという感想もあります。それがたまたまなのか、それとも私と似た意見を発信する人がこれから出てくるということなのか、自分の問題として考えていこうと思いました。



明日のラジオ「その場しのぎの男たち」のコーナー「つながる読書」でも紹介します。
by ANB27281 | 2013-05-06 16:18 | レビュー

鳥取県米子市で営業する、スバル代行社長の個人的なブログです