月から帰還した王者

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17年目にして円熟の境地。VANDENBERG'S MOONKINGSのデビュー・アルバムはこちらから!






エイドリアン・ヴァンデンバーグが、ハード・ロック・シーンに帰ってきました。デイヴィッド・カヴァデールと2人で来日した際のアコースティック・ライブ「STARKERS IN TOKYO」をWHITE SNAKE名義で発表して以来ですから、実に17年ぶりです。





素晴らしい作品です。ホントに。いろいろ修飾語句を考えましたが、他に言葉が見つかりませんでした。ごめんなさい。





80年代初頭に「VENDENBERG」として鮮烈なデビューを果たしたエイドリアンは、当時からここ日本で熱狂的な人気のギタリストでした。アメリカの脳天気さとは無縁の、オランダという異国情緒たっぷりな哀愁のメロディと圧倒的なテクニックは、今聴いてもまったく色あせるところがありません。




この当時のエイドリアンこそ最高とおっしゃる方も少なくないと思いますが、しかし個人的にはブルースの影響を色濃く出しながら、ハード・ロックの1つのクライマックスを迎えたWHITE SNAKEでの活動と作品が、やっぱり素晴らしいと思うのです。今回の復活作も、この当時の、LED ZEPPELINら70年代ハード・ロックのエッセンスを、今に伝える音作りとなりました。




音作りといえば、アムステルダムの近くにある、有名なレコーディング・スタジオで、60年代・70年代のビンテージ機材を積極的に使った、アナログ風の音作りも、往年のファンをニヤリとさせることでしょう。こうした試みは、一歩間違うと自己満足な懐古趣味に終わることが少なくありませんが、エイドリアンの感動的な演奏を前に、むしろ若いファンには新しく映ると思います。





娘の出産を迎え、子供が成長するまではそばにいたいと、音楽家から画家としてのキャリアを大切にしてきたと聞いています。エイドリアン・ヴァンデンバーグのアルバムのアート・ワークが、多くを自身で描いたもので、地元オランダはもとより欧州では人気なのだとか。私は画のことはよく分かりませんが、エイドリアンは17年間ひょっとしたら月で王様(MOONKING)として活躍していたのでは無いかと思いました。




そうした神秘的な仮説を立てなければ、17年もの長い間音楽活動から遠のいていたにも関わらず、こんなに素晴らしいロック・アルバムを作ってしまう説明ができません。繰り返しになりますが、これは昔有名だった人が、当時の栄光にすがって出したアルバムだとか、70年代風の音作りを狙って、今の音楽について行けないおじさんの溜飲を下げさせる慰めの作品などではありません。




類い希な才能をもった人が、静かな情熱を絶えさせることなく燃やし続けてきました。来る時期を迎え、素晴らしい楽曲群を、往年の仲間と新しい世代の音楽家たちといっしょに作り上げてくれました。エイドリアンのギターも良いが、シンガーの歌声がまた良い。シーンを越えて、すべての音楽ファンに聴いてもらいたい作品です。






by ANB27281 | 2014-02-24 06:51 | レビュー

鳥取県米子市で営業する、スバル代行社長の個人的なブログです

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