まさか「数学」で泣くなんて

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「その前年比に意味はありますか?」この秋オススメは”数学女子智香”が教えてくれるこの本!











ビジネス数学の第一人者、深沢真太郎さんの最新刊は






「数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。」




という名前の本です。ちょっと長い(笑)。





しかし、このタイトルは無駄に長いわけではありません。まさしく「仕事で数字を使うって、こういうことか!」ということが、無理なくすーっと実感として分かると断言いたします。






数学科出身の柴崎智香は、コンサルティング会社からとあるアパレル系の会社にヘッドハンティングされます。そこには、“文系”を画に描いたような、「経験」と「勘」にだけ頼って仕事を進める営業部員たちがいました。






本書は、数字を軽視してしまいがちな営業部の木村斗真と、先述の柴崎智香2人の会話を中心としたストーリー仕立てで進行していきます。いわゆるビジネス系の指南書(How to)で、マンガやストーリーを中心に説明する本が結構ありますが、筋書きが強引だったり、著者の独りよがりが鼻についたりすることが少なくありません。その点、この本は基本的なところで読み物としてかなり面白いです。読みながら次のページをめくるのが楽しみな数学本というのも、ある意味珍しいかもしれません。




《(木村)「やっぱり俺にはただの屁理屈にしか聞こえないね。だって、俺はいままでこのやり方で“当てて”きたんだ。仮に俺が“予想”しかできなかったとしても、結果を出してきた。ビジネスは結果がすべてだ。別に文句はないだろ」

木村の主張に頷く女性店長もいます。木村がここまでこのブランドのセールスを引っ張ってきたことは事実です。ゆえにショップスタッフからの信頼もとても厚いのでしょう。しかし、彼にはある視点が決定的に抜けています。それを智香は、この機会を使ってどうしても指摘したいのです。


(柴崎)「今の先輩の発言は90%正しいです。確かに、ビジネスは結果がすべてだと私も思います。でも、ひとつだけ抜け落ちている視点があります」
(木村)「いったい何だよ」
(柴崎)「“続かない”ということです」
(木村)「は?だから何がだっての!?」
(柴崎)「先輩の予想が今後も当たり続けるなんてことは、あり得ないということです」》
(「数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです」P.106〜107)




ドット柄ブラウスのセット商品として、今までの「経験」と「勘」を頼りにショートパンツを推そうとする木村に対して、柴崎は「ショートパンツを推す理由は『予想』なのか『予測』なのか」と問います。勘を頼りにした「予想」は、究極的にはギャンブルといっしょであり、ビジネスとしてやっていくためには根拠と規則性を頼りにした「予測」をたてていかないといけない。そんなことを、先輩である男性に対して、彼女は一所懸命に、しかし丁寧に説明していくのでした。





深沢さんの本は以前も取り上げたことがあります。彼は、ごくごく一般的なビジネスシーンで、いかに「数学」が大切か。しかもその「数学」は、難解な用語や公式を多用するのではなく、中学高レベル(あるいはそれ以下)の知識で十分力を発揮するということを私たちに教えてくださってきました。本書もその意味で例外ではありません。「平均」の本当の意味、相関係数の使い方やABテストでわかること、「標準偏差」の考え方と実例・・・毎日普通のビジネスパーソンが目にしている数字を、読み解いて仕事に活かすコツが、分かりやすく、しかも面白く書かれた希有な本です。





「経験」や「勘」だけを頼りに仕事をしてきた木村斗真は、数学を大切にし、数字の意味の重要性を説く柴崎智香と事あるごとに衝突し、当初は「ウザい」と対立しますが、柴崎の情熱ある説明を前に、次第に考えを改めることになります。それは何も、経験や勘というものを否定するわけではありません。もちろん、いわゆる“センス”みたいなところも含めて、経験や勘というのは大切な資質です。ただ、それ“だけ”では弱いというか、いつか来るピンチや危機に対応ができないでしょう。規則性や理論に基づく「数字の意味」を身につけることで、木村は自身の力を大きく伸ばし、人間的にも成長することに最後はなります。







お恥ずかしながら、私自身今までの経験だとか、「ピンチの時は根性で乗り切る!」みたいな性格の持ち主なのもあり、本書を読みながら何度も目から鱗のようなものが落ちる気がしました。柴崎は典型的な「数学女子」で、一見冷たい女のようにも読み取れますが、数字や規則を信じるその1枚裏側には、実際に仕事を進めるのは生身の人間であり、数学やデータが、生身の人間から離れて一人歩きしてはいけないし、逆に生身の人間もデータや数字を正しく読み取るスキルが必要不可欠だという、強い意志が感じられます。





そうした柴崎の意思は、とりもなおさず著者である深沢さんの思いでもあります。感覚や経験だけを頼りに仕事をしてきた私には、心に突き刺さり、大いに反省しつつも感動してちょっと涙が出てしまいました。






来週のラジオ「その場しのぎの男たち」では、そんな不思議な作家深沢真太郎さんをゲストにお招きします。ぜひお聞きください。
by ANB27281 | 2013-09-13 17:29 | レビュー

鳥取県米子市で営業する、スバル代行社長の個人的なブログです