名盤への敬意をこめて

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発売40周年(!)「リ・マシンド」がお勧め!






カバー・アルバムとか、トリビュート・アルバムと呼ばれる作品があります。過去の名作とか、非常な名声をすでに得ているアーティストの楽曲を、本人以外の音楽家が演奏し録音されたものです。




少し考えてみると、少なからずの「名曲」を収録するわけですから、ある程度聴き応えのある作品に仕上がりそうなものなのですが、まぁこれが往々にして退屈である。割合に有名な人が思いがけないようなカバーをしていると、ついつい「お!」と思ってしまうわけですが、やはり実際に聴いてみるとさほど心が動かされない事が多い。




これは一体どうしてだろうと考えてみるに、1つは当たり前と言えば当たり前だけど「オリジナルは超えられない」という理由がある。面白い物見たさに1回や2回聴くなら、レコードがすり減るほど聴いたであろう原曲を聴いた方が普通はよほど味わい深いでしょう。



それからもう1つは、すべてがそうでは無いと思うしそれ自体が悪いとも言えないのですが、どうしても企画そのものが“小銭欲しさ”みたいになってしまって、聴いていてなかなか感動が湧かないというのも、あるかもしれない。悪意は無いのでしょうが、それこそゼロから作品を築いたオリジナルに比べれば、どうしてもトーンダウンというのは否めないでしょう。





だから、今回伝説の名盤として知られるディープ・パープルの「マシーン・ヘッド」が、とても有名なアーティストたちにカバーされて1枚のアルバムになったと聞いても、さほど関心がありませんでした。あのメタリカが、「マシーン・ヘッド」のレコーディング時に録音されるも、結局アルバムには収録されずシングル「ネヴァー・ビフォア」のB面として日の目をみた曲として知られる「ウェン・ア・ブラインド・マン・クライズ」を演奏してると知り、まあ聴いてみるかと思った程度というのが偽らざる動機だったと告白します。






前置きが長くなったかもしれませんが、このアルバムはとても素晴らしいカバーアルバムです。





おそらくハード・ロックと呼ばれる音楽に、最もその後影響を与えたアルバムの1つである「マシーン・ヘッド」が1972年に発表されてから、今年は40年目の節目です。英国の音楽雑誌「クラシック・ロック」が企画したから、と一言で言い切ってしまうのは乱暴かもしれませんが、エグゼクティブ・プロデューサーを務めたドリュー・トンプソンとロビン・ハーリーも含め、参加アーティストのディープ・パープルに対する敬意が全編に溢れています。



先述もした、メタリカの演奏がおそらくハイライトだと思いますが、カルロス・サンタナ、ブラック・レーベル・ソサイエティ、チキン・フット、アイアン・メイデン・・・そうそうたる音楽家たちが、実に楽しそうに「マシーン・ヘッド」への惜しみないトリビュートを披露してくれました。時にオリジナルに忠実に、時に敢えて原曲をみごとに解体するかのようなアレンジの数々は、聴衆としてカバー曲を聴くときの醍醐味の1つだと思いました。



個人的に収穫だったのは、オーストラリアを拠点に活躍するボーカリストのジミー・バーンズと、若きブルース・ギター界の星ジョー・ボナマッサなどが演奏する「レイジー」です。まさしく黄金の第2期ディープ・パープルが現代に蘇ったかのような演奏が素晴らしく、とりわけオルガンを担当したアーラン・シーエルバウムが、敢えて故ジョン・ロードそっくりな奏法の中に個性を発揮していて、今アルバムの中でも白眉な曲に仕上がっています。



初回限定版には、ライブ演奏のほかメイキング映像が収録されているのですが、この中でチキン・フットのギタリスト、ジョー・サトリアーニが次のようなコメントを寄せています。



《それで(「マシーン・ヘッド」の)オリジナルを聴き直すと、その意外な繊細さに驚かされるんだ。そんなに音数も多くなく、リッチーも意外と弾いてない。入ってくる時も凄く繊細なんだ。イアンは軽いシャッフルを叩いているだけだし。でも、何故だか凄く大きいんだ》



ハードロックやヘヴィメタルの「教典」のように言われる事も多い、アルバム「マシーン・ヘッド」ですが、実際に改めて聞いてみると、ブルースを元にとてもデリケートな音作りをしているのに気づかされます。クラシックのフレーズを織り交ぜた演奏は、当時アートロックと呼ばれたこともあると聞いた事がありますが、狭いジャンルで語りきる事ができないからこそ、40年の時を経て世界中で愛されていると言って良いのかもしれません。長年オリジナルだけを聞いていると、自らの経験も重なって1つの先入観にも似た感情が芽生えるのかもしれませんが、そうした間違いをふき払って、新しい楽しみ方を教えてくれる。カバー・アルバムにはこうした可能性もあるのだよなと、ある種の理想のようなものを感じずにはおれません。



大変、味わい深い音楽作品です。
by ANB27281 | 2012-10-05 16:23 | レビュー

鳥取県米子市で営業する、スバル代行社長の個人的なブログです